プレスリリース:ベトナム・カンボジア・ミャンマーから日本への移住労働者の権利保護に関するワークショップ

2019年7月16日

プレスリリース:ベトナム・カンボジア・ミャンマーから日本への移住労働者の権利保護に関するワークショップ

 

2019年7月8日、Mekong Migration Network (MMN)は東京にて関係者を招いたワークショップを開催し、日本における特定技能をはじめとする外国人労働者に関する法令の改定、送り出し機関の批准する行動規範、斡旋手数料ゼロモデル、移住労働候補者への正確な情報伝達の必要性、関係者同士のネットワークの重要性等の問題について議論を交わしました。

ワークショップは、メコンの国々から日本への移住労働者数が増加していくとの予測のもと企画されました。日本は労働力人口の減少を移住労働者で補填しようとしており、現在の技能実習制度下ではベトナム(72,637人)、ミャンマー(3,692人)、カンボジア(3,328人)が移住労働者の多くを占めています。現在の絶対数はまだ多くはないものの、5年間で新たに345,000人の移住労働者を誘致するという日本政府の方針により、今後加速度的に増加すると考えられています。この政策転換を受け、入国管理法は改正され、「特定技能」のビザが新設されました。また、日本はこの新制度の実施を促進するため、二国間協力覚書をベトナム・カンボジア・ミャンマーと結びました。

これらの変化を受け、MMNは35人以上の関係者を集め、日本・送り出し国両方の視点から今後の課題と可能性について分析しました。参加者は在日ベトナム大使館、ベトナム海外労働者派遣協会(VAMAS)、カンボジア人雇用団体協会(ACRA)、ミャンマー海外労働者派遣企業協会(MOEAF)の代表者、カンボジア・ミャンマー・ベトナム・日本の政府機関、送り出し機関、及び市民社会団体、さらに移住労働の有識者等多岐に渡りました。

技能実習制度に関する議論では、この制度下で雇用されている移住者は労働者であり、労働権利が完全に保証されるべきであることが同意されました。技能実習生の雇用先からの失踪に関する問題も議論の的となりました。移住者と連帯するネットワークの鳥井一平氏はこの問題に関し、「失踪」という単語は実習生自身に問題の責任を転嫁する表現であるため適切ではないと述べ、「根本的な問題が、移住労働者が雇用主を選択・変更できる自由を否定する制度そのものにあるという点です。『失踪』は必ずしも悪いことではありません。日本人は職業選択の権利を有しています。移住労働者が『失踪』する時、彼らは日本人と同じ権利を行使しているのです。」と説明しました。

さらに、日本の市民社会団体は、移住労働者が対峙する問題として、雇用契約書の内容が日本語版と母国後版で異なっていることが多々あるという問題を指摘しました。あるケースでは、移住労働者が署名した母国語の雇用契約書に、妊娠した場合は帰国するという、労働権利違反の条件が書かれていました。国際共生支援機構の青柳一臣氏は「移住労働者は人間です。恋愛をし、子供を産み、家族を持つ権利を否定することはあってはならないことです。」と述べました。

カンボジア・ミャンマー・ベトナムでの送り出しのプロセスに関し、京都大学の安里和晃教授は、日本とこれら三国は技能実習制度に関し同じような協力覚書を結んでいるにも関わらず、送り出しのプロセスに大きな違いがある点を問題として指摘しました。違いの一つとして、移住労働者より支払われる送り出し手数料が挙げられます。送り出し機関が移住労働者より受け取れる上限額はミャンマーでは$2,800、ベトナムでは$3,600、そしてカンボジアでは上限が定められていません。高額な手数料は移住労働者にとって大きな経済負担となり、彼らが雇用主を離れより良い給与の雇用先を探す原因の一つとなってしまう可能性があります。安里教授は、特定技能ビザ制度の下でも送り出しのプロセスは国により異なり、斡旋料規制は機能しないと考えています。新制度の主な特徴、例えば日本の雇用主が移住労働者を直接雇用できるという点等は、ほとんど形骸化するとみています。

ワークショップでは、日本へ向かう移住労働者の得られる補助やサービスに関し、各送り出し国は労働市場でのシェアを獲得するために労働者を安く雇用させる「底辺への競争」を避けなければならないという点で同意されました。フィリピンでは日本への移住労働者は送り出し手数料を支払う必要がなく、雇用者が支払うと規定されており、その例を受けカンボジア・ミャンマー・ベトナムの送り出し機関は無料送り出し手数料モデルの可能性について議論しました。現時点ではそのようなモデルの実施は難しいという結論ですが、送り出し機関の協会の多くは行動規範等を通じ良い送り出しの実践を促進しています。ベトナムでは、VAMASが送り出し機関の行動規範への順守を評価しランキング形式で発表するシステムを作りました。この制度により、より多くの情報が提供され、移住労働希望者が送り出し機関を選択しやすくなると期待されると指摘しました。

多くの参加者が、メコンの国々から日本への移住労働に関する問題を解決するためには、送り出し及び受け入れ国双方の様々な関係者間の協力を促進することが必要不可欠であり、今後も全ての過程において移住労働者が保護されるよう議論を深めていきたいと述べました。

 

MMNについて

Mekong Migration Network (MMN)は2003年に設立され、市民社会団体の地域ネットワーク及び研究機関として、第メコン圏における移住者及びその家族の権利保護と向上を目的に活動しています。MMNの共同活動は共同研究、啓蒙、キャパシティビルディング、ネットワーキング等多岐にわたり、MMNのメンバーは送り出し国・目的国双方で活動し、唯一無二の専門性を有し、草の根レベルで移住労働者と強い関係性を築いています。詳細はMMNのホームページ(https://mekongmigration.org/)をご覧ください。

 

連絡先

ワークショップに関する更に詳細の情報をご希望の方はこちらまでご連絡ください。

  • 針間礼子、Mekong Migration Network地域コーディネーター(日本語、英語可): メールreiko@mekongmigration.org又は電話+81 (0) 80 38042244
  • 安里和晃、京都大学(日本語、英語可): メールasato.wako.4c@kyoto-u.ac.jp
  • ソクチャ・モム、Legal Support for Children and Women代表理事、カンボジア(クメール語、英語可): メールsokchar_mom@lscw.org
  • デット・デット・アウン、Future Light Center代表, ミャンマー(ブルマ語可): メールthet2aung2012@gmail.com
  • キム・ティ・ハ、Centre for Development and Integration理事, ベトナム(ベトナム語、英語可): メールha.kimthu@cdivietnam.org